睡恋─彩國演武─
呉羽の素顔を、やっと見ることができた。
端正な顔つきだが、すこし面長の輪郭、外套で隠されていた優しげな瞳。
それ以上に驚かされたのは、その髪の色。
「呉羽……髪の毛……」
外套の下の、綺麗な銀色の髪。それは、あの虎と同じ。
「やっぱり、あの虎は貴方……だったんだね」
サラサラと揺れる銀に優しく触れると、呉羽は困ったように笑った。
「……はい。隠していて申し訳ありません」
「ううん」
千霧は小さく微笑むと、立ち上がって砂をはたいた。
「呉羽、私は貴方の話が聞きたい。一緒に王宮まで戻って……その怪我も、私の未熟さが招いたようなものだし、手当てさせてほしい」
呉羽に向かって手を差し出す。
月明かりに照らされる千霧の姿は、凛と輝いていた。
「……はい」
呉羽が手をとると、千霧はにっこりと微笑んだ。
夜明けの森は、静かに二人を包んでいた。