睡恋─彩國演武─





星麟の日中は、かなり暑い。

廓の中はいつでも涼しかったため、この暑さに千霧と由良は参っていた。


「どうして同じ国なのにここまで違うんだろう……」


「俺、本当に暑さには弱くて……」


「なんだよ、だらしないなぁ。まぁ白樹は年中涼しいから仕方ないか」


藍は黒い外套をしっかり被って、汗ひとつかかずに扇子を揺らしている。


「外套、暑くない?」


「日焼けは嫌だから。それに、売れっ妓のアイ様がこんなとこ歩いてたら人が集ってもっと暑いよ。僕は暑いの平気だけどさ」


確かに、想像しただけで暑苦しい話だ。


「おやおや、藍も大変ですね」


「大変……って、なんでアンタまで」


藍と同じように呉羽も外套を被り、顔を隠していた。

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