睡恋─彩國演武─
千珠は珀に促されるまま椅子に腰掛け、それからすぐに向き直った。
「──率直に訊きます。珀様は癸火をどう思われますか」
膝に置いた手をきつく握り締めた千珠の声は、僅かに震えていた。
「私は蒐の言う、異形の匂いというものは分かりません。でも、蒐は嘘をつかない……それは確かです」
癸火の事を疑いたくない、しかし蒐の言葉を信じている。
その複雑な心中に、千珠は悩んでいた。
珀はそんな千珠の様子が可笑しいとでもいうかのように吹き出した。
「ふっ……千珠、そんなに心配せずとも、癸火は異形なんかじゃないさ。まぁ蒐には説明する必要があるな。アイツは極端だから」
「では癸火は……」
不安そうに身体を強張らせる千珠に、珀は小さく息をついた。