睡恋─彩國演武─
“王”
その言葉に、千珠は息を飲んだ。
「もしや、珀様は癸火を禍獄の王に立てようとしていらっしゃるのでは?」
珀は真剣な面持ちで千珠を見詰めたまま、
「そうだ、と言ったら?」
逆に問い掛ける。
千珠は少しの間沈黙し、息をついてから珀を見た。
「──それを珀様が望むならば、私は彼を王に相応しい人間となるよう教育するまでです」
千珠にとって、珀は絶対だ。毛頭、逆らう気などない。
ただ、真意が知りたいだけ。
「お前はそう言ってくれると思っていた」
珀の余裕に満ちた微笑みの裏側が、知りたいだけ。