睡恋─彩國演武─
〔壱〕人ならぬ皇子
〔壱〕人ならぬ皇子
陽の王都、朱陽。
平和とされていた陽にも、妖(あやかし)や異形の噂が立ち込め、民の恐怖を煽っていた。
不安を感じた皇は、彩國を護る神に祈った。
「願わくは神よ、どうか陽の国を救いたまえ……」
皇である紫劉(しりゅう)の祈りは何日も続き、千日目、いつものように祈りを捧げると、神は応じた。
しかし龍の姿をした神は、陽を救う代わりに条件を出した。
「その対価に汝の子供のうちの一人、人であり、人であらず。人の身の幸せはけして得られぬ」
約束通り陽は栄え、無事に第一皇子が誕生し、彩國に平和が続いた。
しかしその後、王妃は二人目の皇子を身籠った。
……その子は、人ではない。
懐妊の日から、そんな噂が囁かれ始めていた。