睡恋─彩國演武─
「紫劉様、私は異形の子など産みたくはありません……産めというなら、死を選びます!」
人外の子を孕んだことに恐れをなした王妃は、人外の赤子を産むくらいならと自害を試みたこともあった。
しかし、できなかった。
王妃の躊躇などではない。腹の中の子供は、何か強大な力によって守られており、傷付ける事さえ叶わなかった。
そして、ついにその子は生まれたのだ。
「……これは!」
出産に立ち合った医師達が一斉に口をつぐんだ。
生まれた子には、性別がなかった。
女としても、男としても、欠陥がある。しかし、双方の特性をもつ
“半陰陽”
龍の言葉通り、人としての当たり前の幸せを、けして得られぬ体だったのだ。
「この子は、神と契るという意味を込めて“千霧”と名付けよう」
紫劉は腕に抱いた赤子を高く天にかざして言い放った。
真っ白な雪のような赤子。
その身に人々の業を受け、生まれてきた皇子。
千霧(ちぎり)。
その名を与えられた時から、その運命は陽と共にある。