糸 By of fate
ガチャッ。

『おーっす。』

「きゃ~!!柊~♪」
「あむ~、待ってたぞ~♪」

・・・そう。今日はスタジオに「スターピース」が来るというのだ。
なんでも私たちの次にこのスタジオで撮影らしくて、それまで暇だから私たちのPV撮影の男子モデルがまだ見つかっていなかったらからスタッフが二人に頼んだらしい。

あ。
あむと柊君は事務所公認のカップルだからみんなの前でもイチャイチャするの。

「相変わらずのラブラブっぷり・・・。」

私が少し呆れながらその様子を見ていたら・・・。

「おーい。俺にも構えよ~。」

こんなこと言いながら、私の頭をぐしゃぐしゃにするやつ1人しかいない。

「・・・楓。」

「あいつら、いちゃつきすぎだよな~。」

ずっと私の頭をぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ・・・

「そうだね・・・。っていうか!!髪の毛、ぐしゃぐしゃにしないでっていつも言ってるでしょ!!」

「え~、だって、とあ、ちょうどいい身長だし、髪の毛ふわさらでつい触りたくなるんだよな~。」
でた。イタズラするときとかによくする悪魔スマイル。

「そんな良い髪してませんーっ!」
さらっとふわさらとかい言われたら照れるじゃん。

「なんだよ~、お前らだっていちゃついてんじゃーん。」

柊君があむと手を繋いで近づいてくる。

「ばーか。まだそんな関係じゃねえよ。柊。なっ?とあー」

柊に言い返しながら、肩を組んでくる。
重い・・・。重いよ、ばか。
楓も柊君も180センチ以上あるわけで。150ちょっとしかない私とは30センチも違う。
身長はでかいけど、2人ともスラッとしててスタイルはいいんだ。それでも、でかいから重いけど。
ってか、「まだ」ってなによ。まだって。

「ふーん?まだってことはこれからそうなるのかー?」
私が返事する前に柊君が楓に返す。

「ばっ・・・!!おまえなにいってんだよ!?」
なぜか焦る楓。

私が話の内容についていけないなか、スターピースの2人で話を進めている。

「あむ、衣装着てこよっ?」

「ん?はーい!んじゃ、またあとでねー♪」
あむがスターピースの2人にあいさつをした。

『おぉー。あとでな』
・・・こういうとこハモってるの見ると、仲良いなーって思う。楓はなんか否定してくるけど。本当は柊君のこと大事にしてるくせに。

2人で控え室に入ってみると・・・

白とピンクのふわふわの衣装が置いてあった。

『うわぁー・・・。かぁわいいーっ!!』

ふわふわのドレスには、キラキラとした小さな星の飾りが散りばめられていた。

「ねぇねぇ!早速、着てみようよっ♪」

愛夢がさらにご機嫌に話しかけてきた。

「もっちろん!じゃあ、早く着よっか!」

私もこんなに可愛い衣装を早く着てみたかったから、急いで着替えた。

お互い後ろを向いて、これからお披露目タイム。

「じゃあ、せーのでお互いの方に向き合おう!」

「うんっ、よしっ!」

『せぇーのっ!!』

お互いにぴょんっと飛んで向き合った。

『うわぁ・・・!』

「きゃーっ♪叶愛、かわいい!!肌白いから、真っ白なドレスよく似合ってるっ♪天使みたーいっっ!」

「愛夢こそ!淡いピンクのドレスが肌の白さによく映えるねーっ!お姫様みたいだよ~♪」

私たちは、可愛い衣装にテンションが高まって、しばらくの間、きゃーきゃー盛り上がっていた。

ガチャッ。

「2人ともー?おぉー、今日の衣装よく似合ってるな。盛り上がってるところ悪いが、そろそろスタジオの方に移動してくれー。」

私たちのマネージャーが呼びに来た。(ちなみにマネージャーは二人とも男だよ!)

『はーいっ♪』

私はスキップで部屋を出ようとした。

「あ・・・、ちょっとスターピースの二人に見せるのは恥ずかしいかも・・・。」

私が自信なく愛夢に言うと、

「えー?なんでー?」

「だって、スターピースの二人はかっこいいし、可愛い女の子とかにいっぱい会ってるから、私なんかがこんな格好してたら笑われそう・・・。」

「もーっ!!なにいってんのー!?叶愛は可愛いんだからねっ!?なんでそんなに可愛いのにこんなにネガティブなわけー?!大丈夫よ!楓君もきっと似合ってると思ってくれるわよ~」

「ちょっと・・・。なんでそこで楓が出てくるわけ?」

「えっ、あっ、だって、柊は私のだしー♪鈍感ちゃんにはわからないよーっだ!」

「鈍感ちゃんって・・・。」

私の返事なんて聞こえないかのように、愛夢はスキップしながらスタジオに向かった。

キィー。

少しきしむ音がして、ドアを開けた。

『おーっ、おつか・・・っ!』

スターピースの二人がスタジオに入った私たちに気づいて、声をかけてきた。それにしても、二人ともなんか顔が赤いような・・・?

「えへへー♪柊~っ♡ねぇねぇっ!可愛いっ?似合うかなー?」

愛夢が飛びつくように柊君のとこに話しかけに行った。

「お、おう!めっちゃ可愛い♪さすが俺のお姫様っ♪」

そう言った柊君は少し照れてた。
うわぁ・・・。柊君、大人って感じ。

二人から目を離すと、楓が顔を赤くしてこっちを見てた。

「なーに見てんのー?あ、もしかして私に見とれてたー?なーんて・・・」

「ばっ・・・!お前何言って・・・///」

「冗談だってー!私なんかに見とれるわけないもんね(笑)」

「“なんか”じゃねえよ。・・・ってる・・・いい。」

「え?今なんて言った?」

「だから!!似合ってるって言ってんの!可愛い。」

急に楓が真顔で私を見つめてそう言った。

「え・・・。もっ、もー!やめてよー、そんな急に冗談言われたら、照れるじゃんか!」

「・・・。冗談なんかじゃねえよ。」

「え・・・。それって・・・。」

「ツインスターズさん、撮影始めまーす!」

楓に聞きたいことがあったのに、撮影の時間になってしまった。

スタジオのセットにはたくさんの羽と花びらが床にまかれていた。

今回の曲は、付き合ったばかりの彼氏に自分のことをどう思っているのか不安になって、聞きたいけど嫌われたくなくて聞けずにいる、そんな切ない感じの曲だ。

それよりもさっきの楓の目・・・、真剣だったけど、熱っぽかった。楓はたまにそういう目で見てくる。そんな視線からそらせなくなるから困る。

「とあっ、今日も本気で!集中して頑張ろうね!」

考え事をしていたら、愛夢が真剣な目だけどいつもの優しい笑顔を向けた。

「もっちろん!曲をみんなの心に届けよう!PV見てる人が感動しちゃうくらい!」

「よしっ、やるぞっ!」

私たちは気合いを入れた。

PV撮影は口パクでもいいんだけど、私たちは気持ちをより込めれるから撮影でも歌うようにしてる。

「それでは、撮影を始めます!」

スタッフさんがそう言うと、スタジオは一瞬シンとなった。

♪~♫~♬~♩

音楽が流れ始めると、私たちはうつむく。

最初は愛夢が歌う。

【やっと結ばれた私たち 二人の物語の始まりは
 熱くて甘い二人の目 交わる視線
 輝く今 幸せな未来
 そう思ってたのに】

愛夢は高くて綺麗な声で自分のフレーズを歌った。
次は私の番だ。大きく息を吸った。

【それなのにどうして?
 なんでこんなにも不安になってしまうの
 君の気持ち 知りたい だけど
 聞きたいけど聞けなくて
 本当は私だけを見てほしいのに・・・】

あ・・・。今、楓と目が合った気がした。

楓も私と目が合ったことに気づくと下を向いてしまった。

私がスターピースが話していたことについて知るのはもう少しあとのことだった。

ー楓side

「俺はいつだってお前、叶愛のことしか見てねえよ・・・。早くあいつの存在なんか本当に消して、俺にしろよ・・・。」

叶愛と目が合ったときのフレーズがどうしようもなく切なくていじらしかった。気づくと俺は呟いていた。

そんなとき、今まで笑顔で愛夢のことを見ていた柊が話しかけてきた。

「かーえでっ、二人とも可愛いね?最初のフレーズの愛夢のいじらしい顔も可愛いけど、次のフレーズの叶愛の切ない顔も綺麗だね。叶愛、演技うまいな?愛夢もだけど。ハスキーボイスも綺麗だし。」

「あぁ・・・。叶愛の本能がそうさせんだろーな。やっぱ綺麗だし可愛いよな・・・。てか、柊、お前、ちょこちょこ愛夢の自慢話はさむなよ。愛夢のこと好きなのはわかるけどよ。」

「えぇ~、だって愛夢可愛いんだもん♪てか、楓、本当に叶愛のこと好きだよな。いっつも見てるもんな。てか、愛夢のこと好きなんじゃねえよ?」

「は?お前、何言って・・・。」

「好きなんじゃねえ。愛してるよ。愛夢のこと。愛してるだけじゃ足りねえくらいに。」

「はっ、俺だってそうだよ。叶愛のこと。」

話しているうちに曲はそろそろサビに近づいていた。

『Tell me 私だけにそっと
 kiss me とろけるくらいに甘く
 give me 私に愛を
 いつまでたっても どこにいても
 私には君がすべてだからー』

今まで少しうつむいて演技しながら歌ってた二人が顔を上げた。二人は、涙を流しながら切ない笑顔でカメラに愛しそうな視線を向けた。

『・・・っ。』

それを見た俺らは一瞬言葉を失ってしまった。先に口を開いたのは柊だった。

「やばいな・・・。綺麗すぎんだろ・・・。」

「あぁ・・・。そうだな・・・。やっぱ俺に振り向いてほしいな。今のままじゃただの仲の良い友達止まりだ。早くあんなやつ、本当に叶愛の中から消えちまえばいいのに・・・。」

くそっ・・・。叶愛があまりにも綺麗すぎて、本音が出たな。

「かえで・・・。それは、お前と叶愛次第だろうな。お前がどれだけ振り向かせられるかだろ。叶愛には俺らに出会う前の記憶が残ってねえし、あいつのことも思い出せていないままだからな。」


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