深紅の花に姫君《改装版》
「恋する気持ちを諦めないで下さい。想い続ければ、きっと、報われますから」
「なっ………」
コイツ、俺がスイランを好きなのを知ってるのか!?
全てを見通したような物言いに、焦る。
「そして、その愛こそが彼女をこの世界に繋ぎ止める……」
「彼女………」
気のせいか、さっきからスイランの話をしてるんだよな?
姫だとか、彼女とか、女を指す言葉に戸惑う。
そういえば、スイランは時々自分の事を“私“と呼んだ。
もしかして、いや……おれの期待なのかもしれないが、スイランは女なんじゃないのか……?
「今度こそ、あの方をお救い下さい」
「え………?」
ザワァァァッ!!!
突然、強い風が吹き、咄嗟に目を瞑る。
「愛を失いし者一人。神は人の子の涙に再び命を与える…」
風に混じり、透き通る声が聞こえた。
そして、もう一度目を開けた時には少女の姿は消えていた。
「何だったんだ……?」
突然訪れた静寂に、俺は戸惑うしかなかった。