深紅の花に姫君《改装版》
「馬を借りるか……もっと遠くまでいかねぇと」
「うん………」
でも、遠くってどこまで?
どこまで行けば、私達は幸せになれるの?
世界の果て、たとえそんな所があったとしても、世界はひとつしかない。
私達がたどり着けるのなら、きっと誰にでもたどり着けてしまう。
そうしたら…………
私とレインは引き離されて、命を落とすんだ。
「スイラン、ほら……」
いつのまにか、馬を借りてきたレインが、馬上から私に手を差し出す。
ーこの手の温もりを、ただ頼るだけでいいの?
「大丈夫だ、行くぞ」
戸惑って手を取れない私の手を、レインが掴んでくれた。
「ありがとう、ごめんね、レイン…」
そう言って手をとる私を、レインが悲しげに見つめていた事に、私は気づかなかった。