深紅の花に姫君《改装版》
ー⭐rain side⭐
「…………………………」
「…………………………」
馬の駆ける音だけが響く。
俺の前に座るスイランを片手で支えながら、遠くを見つめた。
この先、どこまで行けばコイツを幸せに出来る?
逃げ続ける毎日、スイランが弱っている事にはとうに気づいていた。
「スイラン、体制辛くないか?」
「すぅ………すぅ…」
前に座るスイランに声をかけると、代わりに規則正しい寝息が聞こえた。
「疲れてたんだな………大丈夫だ、お前の事は俺が守る」
絶対にだ。
それだけはなんとしても成し遂げねぇと………
ただ………
今まで生きてきた古郷、国、家族、友人……
そんな大事なモノを捨てさせて、今も罪悪感に苦しむスイランを、俺は本当に守れてると言えるのか……?
何が、守るという事なのか、分からなくなっていた。
「お前は……自分の我が儘に全てを犠牲にしたって思ってんだろうが………」
それは、スイランだけじゃない。
「俺も、俺の我が儘で色んなモノを犠牲にしたんだ…」
ただ、スイランを誰にも渡したくなかった。
俺の傍で、ずっと守りたい………そんな我が儘に、スイランも犠牲になった。
俺は、本当にこれで、良かったのか……?
何度も問いかけては見つからない答えに、俺は悩まされていた。