深紅の花に姫君《改装版》
ー⭐suiran side⭐
「ねぇ、ここ…………」
ガハラテルナ王国の街道の途中にあった小さな村。
そこへたどり着いて私達は言葉を失った。
「戦か……?」
「ひどい………村一つが焼け落ちてる……」
ガハラテルナ王国の王都から離れれば離れるほど、街道やその途中にある村は荒れ果てていた。
どうしてこんな事が………
「少し、見ていこう……」
私の提案に、レインは私の手を掴み引き留める。
「やめとけ、お前はもう姫じゃねぇんだろ…?」
「レイン…………」
そうだ、私はもう王族でも何でもない。
薔薇の姫でも、女神でもないのに………
「分かってるのに…………」
どうして、見て見ぬふりができないの………
誰かの為とか、そうじゃなくて、見捨てる事に感じる罪悪感に耐えられないんだと思う。
「レイン、生きてる人がいるかもしれない。だから……」
「……そう、言う気がしてた」
苦笑いで私の手を引くレイン。
そして村へと足を踏み入れた。
私はまだ、完全に宿命から逃げる事を受け入れていないのかもしれない。