深紅の花に姫君《改装版》


「それを、簡単に忘れろ、なんて言葉は言えないけど…」


憎む度に心が痛んで、苦しむのを私は知ってる。



「私も、母様を殺したヴァンパイアは許せない。でも、気づいた事もあるの」

「気づいた事?」


そう、私がその敵をとったとして、母様は帰ってこない。


そして、私を守ろうと命をかけてくれたのに、私は残された一生を憎しみに捕られて生きるなんて、守ってくれた母様はきっと悲しむ。


優しい人だったから……


「残された私達は、誰よりも幸せだって胸を張れるくらいに生きなくちゃいけないと思うの。先に逝った大切な人達は、私達が憎しみや悲しみに暮れて生きる姿なんて、きっと見たくない。私なら、笑っていてほしいから…」


「……やっぱすげぇな、スイランは…」



レインは、私を見つめ苦笑いを浮かべる。



「どんな奴よりも辛い思いをして生きてきたってのに、いつだって誰かを想う優しさと前を向く強さを失わないんだもんな……」


レインはまるで眩しいモノを見るように目を細めた。


「違うよ…一人じゃなかったから、レインや、皆がいるから、私は辛くても何度も前を向こうって思えるんだよ」



辛いとき、必ず誰かに支えられてここまでこれた。
人は、一人では生きてはいけない。




















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