深紅の花に姫君《改装版》
「スイラン、出来れば君はヴラド様にあげたくなかったな」
ジルドは一瞬、悲しそうに笑った。
「情など持つだけ苦しいだけだ。俺がつれていく」
センリはジルドの前に立ち、紅い瞳を光らせ、一気に距離をつめてくる。そして、急に延びた爪に切り裂かれそうになる。
その辛そうな表情が忘れられなくて、私は動けなかった。その時、私の前に銀の髪がよぎる。
ーキィィーーーン!!!
「やらねぇよ、コイツは………」
レインが剣でセンリの爪を弾き、私を胸に抱き寄せた。
「レイン………」
「スイラン、悩んで悩んで答えを見つけろ。それまでの時間は、俺が稼いでやる」
レインはセンリを睨んだまま、私を安心させるように頭をポンポンと撫で、離れた。
「…………ありがとう、レイン」
私は私を守る頼もしいその背中にお礼をいい、ジルドを見つめた。
「ヴラドは、ヴァンパイアの主だね」
たぶん、お母様を殺したヴァンパイア…………
「そうだよ、君の敵で、恨むべき相手」
ジルドは面白そうに私に歩みを進める。
それに気づいたレインが私に駆け寄ろうとするが、私は首を振った。
「ヴラドに会わせて」
私の言葉にその場が凍りついたように静まりかえる。
「何、言ってんの、スイラン」
動揺し、立ち止まるジルドに今度は私が歩み寄る。