深紅の花に姫君《改装版》
「あなたは、そうは思わないのですか、薔薇の姫」
ヴラドの問いに、私は顔をゆっくりと上げた。
「私は………私は、そうは思わない……」
『セシル、私は地上が好きよ』
「!!」
また、私じゃない誰かの声がっ…………
「何故ですか?あなたは、その愚かな人間の欲に最も傷つけられた犠牲者でしょう?」
人間の欲…………。そう、いつも戦争は、権力や金、特別な力を我が物にしたくて、誰よりも優れていたいという傲慢さが招いた。
でも……………
『……セリ様がいるから……でしょうか』
『そうね。セリを好きになって、そしてその周りにいる人達、彼らが住む場所である地上を好きになったわ』
また、誰かの声が聞こえた。そう、この人と同じ……。
私は、瞳を閉じて、この世界の愛しいモノ達を思い浮かべた。
「私は、父様や母様が好き。城の皆も、民も、その民の生きる町や、町を支える大地が好き」
突然語り始める私を、ヴラドは怪訝そうに見つめる。