深紅の花に姫君《改装版》
『ある月の晩、私は国が一望出来る丘へと降り立った』
場面は、静かな月夜にたたずむ、美しい女神が映し出されている。
『そして、出会った………』
ーバァァァァッ!!!
一際強い突風が吹き荒れ、アリア様の髪を巻き上げる。そして………
「あんた、女神か………?」
美しい銀髪を頭の上の方で結い、旅をしているのか、大きな鞄を背負いながら、驚いたようにアリア様を見つめた。
「驚きました、私が見えるのですか?」
『私たちは、神の存在を信じるモノにしか認識されない。この時には、神を信じる人間は格段に減り、神職につくものだけが認識できたの』
じゃあ、この人はなんで…………?
『昔、英雄神に剣を習ったのだと、話していたわ』
英雄神………じゃあ、彼も、神様のことを信じてるんだね。
「見えるって、そらぁ、見えるけど……人、じゃねぇな。俺の師匠と同じ気配がする」
「神と面識がありましたか。それなら、納得ね」
アリア様は柔らかい笑みを浮かべ、手をさしのべる。
「私は慈愛の女神、アリア。あなたは?」
「あ?俺はセリだ。って、あんた女神様なんだろ、握手なんて、人間みてぇーな事すんだな」
セリは可笑しそうに笑い、私の手を握り返す。
「おっ!!?」
すると、瞬く間にセリの手の甲の傷が癒えた。
「これも、神様の力か??」
セリの言葉に、アリア様は頷いた。