深紅の花に姫君《改装版》
「行ってしまわれるのですか……?」
セシルは酷く悲しげに、アリア様を見つめた。
「セシル、ごめんなさい。ここまで、私に遣えてくれて、本当にありがとう」
感謝の中に別れを悟り、セシルは涙を堪え、首を横に振った。
「セシル、私は地上が好きよ」
「……セリ様がいるから……でしょうか」
カルノンゲーテの教会の前、花々の中に立つ二人の人影。
「そうね。セリを好きになって、そしてその周りにいる人達、彼らが住む場所である地上を好きになったわ」
「………ですが、神は地上を壊すことを決めてしまわれました。それを、覆す事など出来ません…」
セシルは、アリア様の決意を知っていて、あえてそう問いを投げ掛けたのではないかと思った。
「まだ、この深紅の想いがあるわ………」
アリア様は、自身の胸に手を当て、微笑んだ。