深紅の花に姫君《改装版》
「慈愛の女神の愛は、奇跡を起こす」
「ですが、その愛は、アリア様の力の源です。それを捧げれば、アリア様はっ!!」
「セシル、元は、あの世界を愛して生まれた想いだもの。私が貰ったたくさんの愛を、あの世界へ還すだけ」
アリア様の言葉に、セシルはうなだれた。
「アリア様のお心は、もうきっとお変わりにはならない。だとしたら、私は最期までそれを見届けます」
セシルは深々と頭を下げた。
「私の天使、この今も先も、私の天使はあなただけよ」
「私が仕えるのも、アリア様だけです」
親愛の包容を交わし、アリア様は一歩前に足を踏み出した。
「行ってらっしゃいませ」
セシルの声と同時に…………
ーバサッ
純白の翼が開き、アリア様は地上の空へと飛び込む。
空から見えるのは、一面の赤と、災厄であるヴァンパイア、ヴラドの姿。
「もう、災厄が落とされて…………」
空から見えるのは、地獄だった。人が、ヴァンパイアと戦い、破れる。そして、仲間だったモノが、敵になる。