深紅の花に姫君《改装版》
「まさか、お前が………じゃなかった、あなたが王子だったとは思いませんでした。スイラン王子、これから誠心誠意、仕えさせていただきます!」
あぁ……この、人が遠ざかっていく感覚。
もう馴れたと思っていたのに、期待していた分、痛みが大きいや…
「ねぇ、レイン」
「はい」
あの夜みたいな、砕けたレインはもういなかった。
王子に対しての遠い距離間だ。
「僕の傍にいる時は、普通に接してくれないか?あの、舞踏会の時みたいにさ」
「ですが………」
「二人の時だけでもいい、堅苦しいのは肩が凝るんだ。これから先も長いんだし、仲良くしようよ」
そういって笑うと、レインはため息をつく。
あぁ、やっぱり駄目か…………
そうだよね、やっぱり普通に接してなんて、父様や大臣の手前、出来ないよね。
落胆していると、ありえない返答が返ってきた。
「そら、良かったー!いい加減疲れてきてたんだよ、このしゃべり方。スイラン王子がやりやすい奴で良かったわー!」
と、突然伸びをしはじめるレイン。
あ、そのままのレインでいてくれるってこと!?
レインはニヤリと笑い、私の手を握る。
「知ってると思うが、レイン・クロードだ。これからよろしく頼む。お前の事は、絶対に守りきるから、安心しろ」
「レイン……………」
私は、驚きに目を見開く。
私は、きっと一生この日の事を、目の前で笑うレインの笑顔を忘れないだろう。
私が王子でも、ありのままの姿で傍にいてくれるという、彼の笑顔を。