深紅の花に姫君《改装版》
⭐rain side⭐


ーパァァァ!!

薔薇の花が、一気に咲き誇り、幾千の花びらを散らす。


「っっ!!」


それは、まるで花吹雪のように強く吹き荒れた。


「これはっ…………」


すると、すぐ近くで驚く声がする。振り返ると、ジルドが驚いたように自分の顔を触っていた。


「ジルド、お前目が………」


紅い血のような瞳が消え、漆黒の髪と瞳が現れた。



「牙も消えてる‼これ、まさか………スイラン?」


ジルドは、花吹雪に触れて、切なそうに見上げた。


「これはっ………おのれ、慈愛の女神め……」


地面に写し出された戦場では、ヴァンパイアが人間に戻り、人は剣を下ろし、その花吹雪に目を奪われている。


誰もが、戦おうなどとは思わないほどに、美しく優しい花吹雪だった。



「スイラン………お前、すげーよ……」


お前は、剣無しに戦いを終わらせちまった。綺麗事だって思ってたのに……


「命賭けて、皆が幻想だって笑う夢に必死になって…」


俺でさえ、半信半疑だったのに、お前が言うと、本当にそうなるんしゃないかって思えた。


「慈愛の女神め、許さない、許さない、許さない‼」


狂ったように叫ぶヴラドは、花吹雪を爪で裂こうとする。



しかし………


ーパァァァ!!!


裂いた花片から、光が溢れ、ヴラドを包み込んでいく。


「やめろ!!近づくなー!!!」


光は、ヴラドから鋭い爪を奪い、牙を奪い、紅い瞳を奪う。そして………



















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