深紅の花に姫君《改装版》
「この私が………人間になったなんて……」
震えながら、ヴラドは自分の顔をペタペタと触る。
「終わりだ………人間になってしまうだなんて、私も、神に見捨てられたか‼」
絶望するヴラドに、俺は近づく。
「お前は、俺の大事なモンを全部奪った」
地面に這いつくばるヴラドをの前に立つと、生気の無い瞳が、俺を見上げた。
「私を殺すのですか…当然ですね、私は人間の命を数えきれないほど奪ってきた」
「お前、死にたいのかよ」
「こんな、神から見放された世界で、生きていたいとは思いませんよ」
神から見放された世界……か。
「神から見放されようが、ここで生きているのは、俺たちだろ」
「何です?」
「神から命令されて生きてるんじゃねぇ、俺達が生きたいって思うから、生きてんだよ」
神とか、関係無い。
あいつがいたから、あいつが作る国で、守った世界で生きていきたいって思った。
「自分の人生、人任せにするんじゃねぇ。それは、逃げだ」
「っ‼」
「お前はこれから人間として、この世界で生きていくんだ。でも、それは絶望なんかじゃねぇ。お前は、もう自由なんだよ、好きに生きたらいいんだ」
なぁスイラン、お前ならこう言うだろう?
「自由………自由に、生きる……」
ヴラドの瞳に、光が戻ったように見えた。
「慈愛の女神、か。あの姫は、私すらも救ったというのか?」
寂しげに笑い、ヴラドは俺を見る。