深紅の花に姫君《改装版》
「アイツ、病気並みなお人好しだから、敵味方関係なく救っちまうんだよ」
でも、そんなお人好しなお前が、俺はたまらなく好きだ。
花の刻印が刻まれた場所には、すでにスイランの姿はない。確かに、あそこにいたはずなのに……
「スイラン………」
俺は、地面に手をついて、刻印をなぞった。
「なら、お前の事は………?」
お前は、多くの人間を、ヴァンパイアを救った。だけど……
「お前の事は、誰が救ってくれんだよ……」
もう、十分すぎるくらい犠牲になった。あげく、命まで捧げろってのかよ!!
「俺は、こんなふうに救われたって、幸せだなんて言えねぇ」
隣に、お前がいない。
誰よりもいてほしいと願う女が、ここにいない。
ーポタリ
涙が刻印に落ちる。
俺にも、特別な力があれば良かったのに。そうすれば、お前の事、救えたかもしれねぇ。