深紅の花に姫君《改装版》
漆黒の闇に光る紅(アカ)
ーアルバンテール国、ノリアの花畑。
今日は、ノリアという暖かい時期に咲く、黄色の花を育てる庭師の花畑へと来ていた。
「ベル、今年のノリアも綺麗に咲いたな」
「これは!スイラン王子、来てらしたんですね!」
作業をしていた庭師のベルが私に駆け寄ってくる。ベルは30になる男性の庭師で、城の専属の庭師でもある。
「おや、そちらは騎士の方で?」
ベルの視線の先には、私の護衛についてきたレインがいた。レインは「誰だ?」と疑問の視線を私に向ける。
「レイン、こちらは庭師のベルだよ。城の庭園の手入れもしてくれている」
「それは失礼しました。俺は、王子の側近、レイン・クロードと申します」
礼儀正しく頭を下げるレインに、ベルは心配そうに私を見た。
「側近が付くなんて、また物騒になったもんで。王子も苦労しますね」
「王子なんて、そんなものだよ。心配してくれてありがとう」
ベルは「いいえ」と笑顔を向けてくれる。
私の身を案じてくれる優しい人の一人なのだ。
「俺が、守りますのでご心配なく」
「レイン?」
突然目の前に立つレインに首をかしげる。まるで、私とベルの間を割くように立ったからだ。