深紅の花に姫君《改装版》
「薔薇の………刻印」
私の、左鎖骨上にある、薔薇の刻印。これは、女王の証であり、王証と呼ばれる。
この薔薇の刻印は、歳を重ねる度に濃く色づき、甘く甘美な香りを強くする。
そう、この血こそ、血を糧に生きるヴァンパイアの極上の果実なのだ。
この血は、ヴァンパイアのみならず、生き物全てに力を与える。傷を癒し、身体能力を高め、時には命すら与えられるとさえ言われた。
母様も、このような体のゆえにヴァンパイアに狙われ、殺された。そう、それは見るも無惨に……
体という形を成さず、骨までしゃぶり取られ、残されたのは人であったはずの肉片。
あの時の事を、私は一生忘れない。
あの、悲しくて、無力さに泣いたあの時を。
「スイラン、遅かったな」
「遅れてすみません、父様。剣術の稽古が長引いて…」
私は私の父であり、現在のアルバンテール国王、ケナン王の王座の隣に腰かけた。
「あまり、体に傷を作るな、お前は……」
「父様、誰が聞いてるのかわからないのですよ?」
うっかりと私が女だと口走りそうな父様を軽く睨み付ける。父様は苦笑いをしながら口をつぐんだ。