深紅の花に姫君《改装版》
「僕も、母様のように優しく強い人になりたいって思うんだ」
この手が、もう二度と何も掴めずに失わぬように。
あの日、私を庇って死んだ母様のように、恐怖に震えて、傍にすら駆け寄れない弱いままではいたくない。
「お前は、強いよな」
「わっ………」
不意にレインに頭を撫でられる。
その瞳は、どこまでも優しかった。
「ただ、もし辛い時は俺に言えよ。俺の前では、強くいようとしなくていいし、無理に笑わなくてもいい」
「僕は王子なのに、そんなの……」
許されない。
私は、誰かを守り、導く側の存在だ。
私の不安は民にも伝染する。
心も、体も守るのが女王になる者の務めだと思ってきた。