深紅の花に姫君《改装版》
「俺が、見たくねぇんだ」
「…………え?」
「そんな、泣きそうな顔。俺の前で強がられると、俺じゃあまだ、支えてやれないのかって不安になんだよ」
レインが私の頬に手を伸ばし、撫でた。
その瞬間、暖かい雫が目からこぼれ落ちたのを感じる。
あれ、私………どうして泣いて………?
そんな、泣くつもりなんて無かったのに……
でも、まるで魔法みたいに涙は止まらない。
「今度からは、俺が傍にいる。だから、もっと素直になれ」
「レイン……なんで、どうして………」
そんなに優しいの?
どうして、私はこんなにホッとしてるんだろう。
誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
母様の事、本当は悲しくて、今でもあの瞬間を思い出しては後悔してきた。
誰にも言えなかった、私の悲しい記憶。