深紅の花に姫君《改装版》



「質問ばっかだな、お前」


そう言って笑うレインの服を、そっと掴んだ。
ビクッとレインが驚いたのが分かる。


それでも、触れていたかった。
すごく不安で、心細かったから………


「薔薇の刻印なんて……無かったら良かったのに……」

「スイラン王子……」



女王になる私が、絶対に言ってはならない事だって分かってる。なのに、そう、思わずにはいられなかった。


「刻印さえなければ、母様は死ぬ事はなかったのに……」


あんな、無惨に殺される事は無かったのに……


涙は流れ、ノリアの花を濡らしていく。
そっと、レインの胸に額をくっつけた。


「……泣いていいから」


そんな私を、レインは抱き締めてくれる。
優しくされると、さらに泣けてきた。


「今でも思い出すよ。庇うように両手を広げて僕を背中に隠したあの姿……」


ヴァンパイアに襲われた城で、城の騎士や給仕達も殆どが喰われ、私達はついに追い込まれた。


『スイラン、父様はここへは来れないわ。民を守る為に戦っているから』


母様は私に諭すように伝える。


父様は私達を助けに来てくれるのだと思ってた。10歳の私には、それは酷い裏切りのように思えて、とても悲しかったのを覚えてる。


『泣かないで、スイラン。父様は正しいわ、私との約束を守ってくれたのだもの』


そう、そこで始めて知った。
母様と父様の二人だけの約束を………












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