深紅の花に姫君《改装版》
「そこまでが僕の覚えてる、今でも忘れられない記憶……」
「そんな……どんだけのモン背負ってたんだよ、お前は!」
ギュッと、先程よりも強く抱き締められた。
その腕が、何故か震えている。
「そんな、辛い思いして、無理して笑いやがって……」
「レインに話したら、少し楽になった気がするんだ。ありがとう、レイン…」
こんな事話したのはレインだけだよ。
今まで、話すことすら辛かったのに、どうしてレインには話せたんだろう。
「俺、今お前の心を守ってやりたいって思うのに、上手い言葉が見つからねぇ。抱き締めてやるくらいしか、思い付かねぇ……」
私を抱き締めるレインを見上げると、眉間に皺を寄せて悔しそうに私を抱き締めていた。
そんな風に、私を思ってくれるから、私はレインに委ねる事ができたんだ。
「それだけで十分すぎるくらい嬉しい……」
「こんなんでいいなら、ずっと、こうしててやるから…」
私は泣き笑いを浮かべる。
それを見て、レインは涙を拭ってくれた。
「絶対に死なせねぇよ。絶対に」
そう言うと同時に、抱き締める腕がさらに強くなった気がした。それに、胸がキュッと締め付けられる。
レイン、レインも私の傍から消えたりしないでね……
誰かを見送るのは、もうたくさん。
あんなに辛い思いは、もう二度としたくはない。
「…私も死なせない……」
レインにも聞こえないように呟く。
これは、私の誓い。
あの日、無力なままでいるのは止めようと決めたから。
強くあろうと、決めたから………