深紅の花に姫君《改装版》


「ふざけてるのは君でしょ?食糧だよ、君たち人間は」


あぁ、この台詞………私は知ってる。
あの黒髪と紅の瞳のヴァンパイアが言った言葉。


母様を喰らったヴァンパイアの言葉そのものだった。



「同じ星、世界に生きているのに……か」


母様、私はそんな風に考えられない。
ヴァンパイアは、共に生きようとする気すらなく、私達を食糧としか思ってない。



なにより、母様を殺した。
そんなヴァンパイアと、一緒に生きる道を探すだなんて、私には考えられないよ……



「人間だって弱い動物を殺し、食べるでしょ?それと同じじゃない?弱い者が強い者喰われるのは自然の摂理だと思うけどなぁ。なのに、君たちは良くて、僕たちは駄目ってそんなの横暴だよ」


「狂ってやがる」


ヴァンパイアとレインが睨み合う。



確かに、ヴァンパイアの言っている事も正論だ。だけど違う気がする。


そんな、簡単な事じゃないはずなんだ。弱いから奪っていいなんて……

でも、確かに私達も同じだ。
言葉を交わすことが出来ないだけで、弱い生き物を殺して食糧としてる。


今の私には、なんて言い返せばいいのか、わからなかった。


「あなたの言う事は事実だと思う……」

「へぇ、じゃあ食べていいって事?面白いね、君」


ヴァンパイアは興味深そうに私を見下ろした。


「スイラン王子?何言ってんだよ!そんなのおかしいに決まって……」

「……そうかな。でも、実際僕たちは鳥や魚を殺して食べてる。同じ事なのかもしれない…」







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