深紅の花に姫君《改装版》
⭐Suiran side⭐
「や、やだな。僕は男だよ」
ズボンを指差してみせると、男の子は「そうだよな」と私から視線を反らした。
「お前も、嫁探しか?」
「え?あぁ、うん、そんなところ」
突然質問され、しどろもどろに答える。
「この国のスイラン王子も花嫁を探してるらしいぞ」
「は、え??」
ちょっとまって。
まさか、王子の私を知らないの!?
この人、騎士団がどうのって言ってなかった!?
ま、まさかだよね。確かに、私はあまり公に出る機会は少ないけど………
「ねぇ、スイラン王子の顔、見た事ある??」
「いや、知らねぇな。舞踏会とか、出たのこれが初めてだし、騎士団に入ったのも2年前だからな」
ははっ………
私が、その王子ですけど!!
でも、まぁいっか。
それはそれで面白いし♪なにより、普通に話してくれる人が欲しかったから…
「そっか、じゃあ……知らないままでいて?」
「はぁ?何でだよ」
怪訝そうに首をかしげる男の子に、私は笑う。
「さぁ、何でだろうね。でも、あなたと話せて楽しかった!ありがとう、えっと……」
そういえば、名前……聞いてなかったな。
何て、言うのかな?
「レインだ。レイン・クロード」
レイン・クロード………素敵な名前。
レインが私の騎士だったら良かったのにな……
「ありがとうレイン。また、あなたに会えたらいいな!」
私が笑顔を向けると、何故かレインは顔を赤くした。
そんなレインを、不思議に思いながらも、私は広間へと戻る為、歩き出す。
「お前は、名前………」
「またね、レイン」
それには答えずに広間へと駆けていく。
言いたくなかった。
私の事を知ったら、レインはきっと、今夜のようには話してくれなくなってしまうと思ったから。
私は逃げるようにバルコニーから去ったのだった。