深紅の花に姫君《改装版》
「女王の血、薔薇の刻印、美しい容姿、王位……。あなたは、私が欲しくて欲しくてしょうがないモノばかり持っていたわよね」
ディオナは憎らしそうに私を見る。
「憎くて、憎くて……殺してやりたかったわ」
「ディオナ……どうして、私たちはずっと……」
仲の良い従姉妹だったのに……
これは夢?
なら、早く覚めて……こんな悪夢、早く覚めてよ!!
「はぁ、その純粋無垢さもヘドが出そうよ。やっとこの国を手に入れる事ができるわ」
あぁ、手首が痛い………
この痛みが、嫌でもこれを現実と教えてくれる。
「分家は肩身が狭くて、そして惨めだった。あなたにはわからないでしょうけど」
そして、ディオナはクリスに目配せをする。
クリスは無言で剣を構えた。
そして………
「!!」
クリスが目を見開くと、その瞳は銀から紅へと変わる。
「その目、まさかヴァンパイアか!!」
レインは私を庇うように前に出て、剣を構える。
「そうよ、ただし、クリスは半分ヴァンパイアなの。母親が人間、父親がヴァンパイアだった。まさに異形の産物ね」
「!!異形の産物だなんて……」
なんて酷い事を……
「ヴァンパイアを愛するなんて、気持ち悪い感情で生まれた異常な存在よ」
クリスが人とヴァンパイアの間に生まれたのだとしたら、それは人とヴァンパイアの間に愛が生まれたという事だ。
それは、奇跡だ。
母様が望んだ未来の片鱗を、見た気がした。