深紅の花に姫君《改装版》
犠牲と幸福
「ジルド……これからどうする」
薄暗い洋館の一室で、蝋燭の炎が揺れる中、感情を映さない低い声が響き渡る。
「そうだな……アルバンテールの国を攻め落として薔薇の姫をもらうよ」
先程の男とは反対に子供のような愛嬌のある話し方をする少年は、机に生けられた薔薇の花を掴み、指先でクルクルと回す。
その薔薇に、あの少女の面影を見ながら。
「見つけたのか!?」
何事にも滅多に動じない男は、珍しく機敏に立ち上がりジルドの肩を揺さぶる。
「落ち着いてよセンリ、ディナーの途中だよ?」
優雅に血の入ったワイングラスに口をつけ、笑う。
「見つけたよ……。この世で最も甘く美味な蜜という名の血……。あの子の血、どんな味がするんだろう」
そう言って少年は唇に舌を這わせた。
楽しみで仕方がない、そしてあの少女に興味もあった。
「飲めばバンパイアとしての力、寿命が延びる。まさに魔法の薬だな」
そう言ってハハッとセンリは笑った。
「さぁ……。アルバンテール王国のバンパイア達を収集しなきゃね…」
そう言ってジルドは立ち上がる。
「バンパイア軍の誕生ってわけだ」
センリはニヤリと不敵に笑った。
「スイラン……。もうすぐ会えるよ…」
あの、質問の答えも聞いてみたい。
人間との共存なんて無理だ。
狩る者と食料という関係である以上は………
だからこそ、予想外の答えを聞いてみたい。
「面白い答え、聞かせてよ?」
ジルドは深紅に染まる赤い薔薇を見つめながら、静かに微笑み、呟いた。