深紅の花に姫君《改装版》
「その方法を探しています。ヘルダルフおじちゃん、母様はその方法を見つけてはいなかったでしょうか?」
母様も同じ、ヴァンパイアと共に生きる未来を夢見ていたはず…
「………まさか、スイラン様がそこまで立派になられていたとは……。このヘルダルフ、みくびっておった」
ヘルダルフおじちゃんは、優しく微笑む。
「もう、立派な女王じゃよ。すでに、世界の本質を見抜いておる」
「世界の本質………?」
「この国だけではない、世界を見据える力。本来在るべき世界の姿を見つめておる。その力が、女王には必要なのじゃよ」
そんな、そんな大層なモノではないけれど……
私の望む世界の在り方かもしれない。
母様を奪ったヴァンパイア。
でも、同じ言葉を持つ生き物………
人も、ヴァンパイアも、同じく恐ろしい化け物にもなり、優しい天使にもなる。
全てはその内に秘める、心次第なんだ。
「アスラーナ女王も、その方法をずっと探しておったよ」
「それなら!!」
それなら、何か方法も見つけられたのかな??
希望が見えて、私は身を乗り出す。
「期待させてわるいのう…アスラーナ女王は、それを探している途中で、亡くなられたのだ」
「そんな…………」
期待が一気に崩れ落ちる。
私はガックリと肩を落とした。
「しかし、アスラーナ女王は自分の力の事を調べておったよ。その特別な血に、何か出来ないかとのう……」
「この、女神の血に……?」
「調べてみたらどうかのう、そうじゃな、先先代女王なら、何か知っておるかも」
「セレネリス婆様ね!!ありがとうございます、ヘルダルフおじちゃん!」
私はヘルダルフおじちゃんの手を握り、笑う。
まだ、希望を失わずにすんだ。
「わしも、スイラン様の見る未来を見届けたい。頑張るのじゃぞ」
「はい!!」
元気良く答えて、私は部屋を飛び出す。
駆け出す足は軽く、早かった。
私に出来ること、何でもやろう。
まだ、逃げるのは早い。
辛くても、私の手には沢山の大切な人の命があるのだから…