深紅の花に姫君《改装版》
「よく来たね、スイラン」
教会へと入ると、セレネリス婆様が出迎えてくれた。
その胸に私は飛び込む。
「セレネリス婆様!会いたかったです!」
「ふふっ、私もだよ」
セレネリス婆様は私の頭を優しく撫でた。
母様が亡くなってからは、セレネリス婆様によく甘えていたっけ。
「スイラン、さぁ、こっちに」
「はい!」
セレネリス婆様に促されて、教会の中にある一室に案内される。そこは、セレネリス婆様の部屋だった。
「セレネリス婆様、また絵を描いてるんですね…」
部屋に入ると、深紅の花の中で眠る少女の絵があった。
それに近づき、まじまじと絵を見つめる。
「その絵が気になるかい?」
「はい………」
この絵………なんだろう、胸騒ぎがする。
急に、脈が早まったみたいに苦しい。
『深紅の想い、命と引き代えに、私は大好きな地上を残す事が出来るわ。それなら、もう迷いなんて無いの』
そう、それはまるで血のように赤くて、そして空の青に反発し自身を主張する深紅の花びら。
その花びらとなって世界に降り注ぐ……
私は世界の一部となってこの世界を見守っていく選択をした。
『たとえ、セリの隣に在る未来でないとしても、セリの生きる世界にはなれる』
だからセリ……
私はここから、あなたを愛しましょう……
ーツウゥ……
涙が頬を伝い、ポタリと落ちた。
それで初めて、私は泣いていた事に気づく。
「何だろう、この気持ちは………」
私の知らないはずの言葉、想いが溢れて苦しい。