深紅の花に姫君《改装版》
「スイラン、昔話をしようね。そう、まだ神々が地上を愛し、人間も神を信じ崇めていた時代……」
涙を流す私の肩に手を添え、セレネリス婆様は私を椅子に座らせる。
「地上では、人間達が戦争や権力争いで荒れていた時代。神々は地上に失望し、壊す事を決めていた…」
今も変わらない。
人間は争いばかりする。
血の繋がりがある家族であっても、昨日まで仲の良かった親友でさえも手にかける。
ましてや、ヴァンパイアという種族まで現れ、人は補食される側の存在となった。
「そんな中、地上を、人間を愛し続けた女神がいたんだよ。それが、慈愛の女神、アリアだった」
女神アリア………
神でありながら、地上を愛した神様……
「女神アリアだけは、人間の未来を信じていた」
「女神アリアは、どうして信じていられたの?人間である私だって、こんな争いばかりする世界にいるのは、苦しいのに……」
何を信じたら、そう思えるの………?
「きっかけは、人間の男を愛した事だね。そして、お互いに想いを交わし、人間や、地上を愛した」
「人間を………愛した……」
なんだろう、またあの胸騒ぎ。
開けてはいけない扉を必死に止めては、その中身が気になってしまうような…期待と焦り。
「女神はなんとかして地上を守ろうとしたが、神々がそれを許す事はなかった。そして、女神はその身を捧げて地上を守る事を決めたんだよ」
あ………
『私には、この深紅の想いがあるわ』
そうだ、この深紅の想いこそが、女神の力だった。
深紅の想い……愛する心は、女神アリアの力の源。
それは、運命さえも変える奇跡の力。