深紅の花に姫君《改装版》


「それは……全てを失ってもそれでも叶えたい願いかい?」


少し、悲しげに問いかけるセレネリス婆様に、私は戸惑った。



「全てを失うって……どういう事ですか?」


“失う“という言葉に、不意に不安になった。
この願いと引き替えに、私は何を失うんだろう……



「女神アリアの時のように、その体、魂を捧げるんだよ」

「!!」


それは、実質的な死を意味していた。



「この世に存在する、家族や友人、愛する人を置いて、天へと還る事。薔薇の姫は、そうする事によってあらゆる運命をも変える力を使う事が出来るんだよ」


「そんな…………私はどうすれば…」



大切な人を救いたいと願いながら、私は死という孤独を恐れて踏み出せない。



「女神アリアのように強くなんてなれない……。私は、一人になりたくないです……怖いっ…」



どうしたらいいのかは分かってる。
でも、どうしたいのかが私は分からない。



私は、死ななければならないのかな………?



「スイラン、私は…役目に捕らわれなくて良いと思っているよ。スイランには、スイランの生き方があるのだから」


セレネリス婆様は私を優しく抱き締めた。
そして、あやすように背中を擦る。






























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