深紅の花に姫君《改装版》
「アスラーナも、スイランの幸せを祈っているはず。宿命に苦しみ、刻印に縛られる事はない」
「ですが、私がそれを投げ出せば、苦しむ民がいます。それに、ヴァンパイアだって……」
人とヴァンパイアの間に生まれたクリスがそうだった。
「彼等を犠牲にして、私はきっと、幸せになれない……」
ずっと後悔して生きていく。
私にはきっと、もうこの道しか残されていないんだ。
「スイラン………」
「セレネリス婆様……ありがとうございます。きっと、これが運命なんですね…」
私は、運命を変える力がある。
なのに、自分の運命は変わらないんだ。
「スイラン……心が決まったら、真理の扉へとお行き」
「はい……ありがとうございます、セレネリス婆様」
私はぎこちなく笑い、部屋の出口へと向かう。
そんな私を、セレネリス婆様が悲しげに見つめていたとは知らずに……