ひめごと。
いつからこれほどまで春菊を想うようになったのだろうか……。
はじめは妹のように接していたはずが、いつの間にか慕情へと変化していた。それを知ったのは、春菊が海を見たいと言ったあの日だ。
熱を持つ彼女の頬が蒸気し、短い吐息が赤い唇から放たれるたびに胸が高鳴った。
うっすらと滲んだ汗が首筋を流れ、胸を伝ったのを見た時は抱きたいという欲望さえ芽生えた。
彼女は自分が知らないうちに美しい娼妓へと変化していたのだ。
――そして、止めは楼主のあの言葉。
ガマガエルのようなあの顔で、まだ健康ではない身体のまま水揚げをしようとそう言うではないか。
冗談ではない。他の男に水揚げされ、しかもそれでまた身体を壊しでもしたら……。
それを考えるだけでも、虫唾(むしず)が走る。
(春菊は誰にも渡さない)
谷嶋は、春菊を強く抱きしめた。