ひめごと。
「怖い夢っていうのは、ほんとうは嘘です。匡也さんに好きだと告げられた夢を見たんです。そんなこと、ないのに……。だけど、貴方のお傍にいると、それが現実だと思い込んでしまいそうになる!!
現実と夢の区別がつかなくなる前に、早くココから出たいんです……」
(匡也さんの邪魔にならないうちに……)
春菊は彼から離れるため、真実を告げた。
静かになった空間の中、春菊のシャクリだけが響く。
だからこれで彼とはお別れなんだと、春菊は思った。
だって、彼には有望な未来がある。いつまでも傍に居られるわけがないのだ。
そう自分に言い聞かせ、絶望に暮れる春菊だが、それはすぐに打ち消される。
ふいに、春菊の身体が浮いた。
――そうかと思えば、敷布団の上で横たわる。
何事かと思った矢先、谷嶋の熱い吐息が、春菊の耳をかすめた。
谷嶋が春菊を抱きしめる。