ひめごと。
「あ、あの、匡也さっ!!」
戸惑いを隠せない春菊をよそに、谷嶋は、耳元で囁いた。
「春菊、愛している」
(匡也さん……?)
「今朝のあれは夢じゃない。春菊、本当に愛しているんだ。春菊、君しかいらない……」
肩口に唇を押し付けられ、愛おしい人にそう告げられると、春菊の胸が高鳴った。
これは夢だろうか。
告げられた言葉に、春菊は耳を疑った。
だが、その言葉に抗う力は、春菊にはもう残ってはいなかった。
彼への慕情が、あまりにも大きくなりすぎていたのだ。
「匡也さん……」
春菊の細い腕が広い背に回れば、谷嶋はあたたかな微笑みを浮かべ、抱きしめてくれる。
力強いこの腕は、夢などではない。
たしか今朝方も、この腕の力強さを感じなかっただろうか。
そう考えた時、谷嶋と想いが通じ合ったのは夢ではなかったのだと、春菊は理解した。