ひめごと。
困惑気味の春菊に、あれよあれよという間に禿たちの手によって赤を主体とした衣で美しく着飾られていく……。
その中で、春菊は自分のこの境遇がいかにおかしなものなのかを思い知らされる。
囲われることすら知らない自分は、夜伽(よとぎ)さえもしたことがない。
ただでさえ病弱で、食が細い自分だ。
彼には迷惑しかかけないだろう。それに、彼は医者だ。たしか、阿蘭陀(おらんだ)で医術を習ったと聞いたことがある。
情けをかけられている今はいい。
しかし、彼はおそらく将来的に嫁を娶(と)るだろう。
何も出来ない自分はいつか捨てられる。
それとも、嫁がいる中で囲われるのだろうか……。
愛おしいと想っているその人の傍らで見窄らしい自分とは違う美しい女性と笑い合うのだ。
――いつかはやって来る別れを思うと胸が押しつぶされそうになる。