ひめごと。
それはおそらく自分は患者で、あくまでも身請けは道理的なものだと言っているのだと、何も分からない春菊でさえもよく理解できた。
所詮、自分は哀れみを持って彼に連れてこられたのだ。
当然といえば当然だ。自分はなにせ、軟弱でしかも夜伽を知らない役立たずな娼妓なのだから……。
そう思えば思うほど、同じ場所に居ながら、心の距離が離れていくようで虚しくも感じられた。
そんな苦しい胸の内を持つ春菊の前に、追い討ちをかけるように、とある人物が現れた。
その日は、広い屋敷にいるのはいつものことながら、世話を焼いてくれる侍女と二人だけで、谷嶋は仕事で家を留守にしていた。
太陽の光がさんさんと輝き、静かな昼間が続く。
けれど、どんなに明るい日差しの中でも春菊の気分は落ち着かなかった。それはまるで、これから起こる出来事を感じ取っていたのかもしれない。
「奥方様、この先は困ります!!」