君が教えてくれた事



薄暗い部屋の中で、リカの瞳が俺の目をしっかり捉えている。




そして、すり寄るように、俺の胸に顔を埋めた。



小さなリカは、俺の腕の中にスッポリと収まる。




しばらくすると、リカは体を震わせた。



「リカ、何で泣くの?・・・嫌だった?」



リカの体を少しだけ離して、顔にかかった柔らかい髪をといて顔を覗き込んだ。


リカの目からは、ポロポロと涙がこぼれ落ちている。



「違うよ。すごく嬉しくて・・・。すごく幸せだから・・・。」



涙に濡れながらも、リカは穏やかな顔をしていた。



「俺も。誰かの事、こんな風に大事だって思った事なかった・・・。」



リカが涙を流した理由が分かるんだ。



俺も、同じ様に涙が出そうだったから。



リカの体を、壊れない様に大事に抱きしめた。



「お前、ちっちぇーな。」



そう言って、リカの胸に手を当てると、


「ひどーいっ!!」


眉をしかめて背中をむけてしまった。



可愛くてたまらないんだ。




「リカ、こっち向いて。」




リカはゆっくりと俺の方に体を向けてくれる。




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