君が教えてくれた事



そしてまた新しい初めてを、リカと一緒に迎える。



二人で行く旅行。



俺にとっては、旅行自体が初めての事。



人生を楽しむなんて、考えた事もなかった俺が、“旅行”に行く。




リカが提案してくれた。



“一緒に行こう!”

“二人で、楽しい思い出をたくさん作ろう!!”



そう言ってくれたんだ。




場所はどこでも良かった。



二人で行けるなら、どこでもいい。



でも、リカが


『歩太の行きたい所に行きたいっ!』



そう言ったから、俺は、


『海が見たい。』


と答えた。




昔、



まだ、おばあちゃんが元気だった頃に、聞かせてもらった話があった。



『日本は、海に囲まれている国だけど、この海を渡れば、どこにでも、行く事が出来るんだよ。
地球には、たくさんの国があるけど、海は地球の中で、最も大きいものなんだよ。人間なんて、本当はすごくちっぽけなんだ。
おばあちゃんが子供の頃に住んでいた所は、海が近くにあって、おばあちゃんは、辛い時や悲しい時は、必ず海を見たんだ。大きい海を見ていると、ちっぽけな自分のちっぽけな悩みが、ものすごくちっぽけに思えて、元気になれるんだ。』




おばあちゃんが、どこに住んでいたかは、知らない。



でも、海を見たいと思った。



どこかできっと、おばあちゃん暮らしていた街、おばあちゃんが見ていた海に、繋がっているから。


リカと一緒に、海が見たいと思った。




.
< 110 / 260 >

この作品をシェア

pagetop