君が教えてくれた事
そしてまた新しい初めてを、リカと一緒に迎える。
二人で行く旅行。
俺にとっては、旅行自体が初めての事。
人生を楽しむなんて、考えた事もなかった俺が、“旅行”に行く。
リカが提案してくれた。
“一緒に行こう!”
“二人で、楽しい思い出をたくさん作ろう!!”
そう言ってくれたんだ。
場所はどこでも良かった。
二人で行けるなら、どこでもいい。
でも、リカが
『歩太の行きたい所に行きたいっ!』
そう言ったから、俺は、
『海が見たい。』
と答えた。
昔、
まだ、おばあちゃんが元気だった頃に、聞かせてもらった話があった。
『日本は、海に囲まれている国だけど、この海を渡れば、どこにでも、行く事が出来るんだよ。
地球には、たくさんの国があるけど、海は地球の中で、最も大きいものなんだよ。人間なんて、本当はすごくちっぽけなんだ。
おばあちゃんが子供の頃に住んでいた所は、海が近くにあって、おばあちゃんは、辛い時や悲しい時は、必ず海を見たんだ。大きい海を見ていると、ちっぽけな自分のちっぽけな悩みが、ものすごくちっぽけに思えて、元気になれるんだ。』
おばあちゃんが、どこに住んでいたかは、知らない。
でも、海を見たいと思った。
どこかできっと、おばあちゃん暮らしていた街、おばあちゃんが見ていた海に、繋がっているから。
リカと一緒に、海が見たいと思った。
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