君が教えてくれた事



旅行の行き先が決定して、後は当日がくるのを待つだけ。



ガイドブックを見ながら、二人で計画を立てる。




もう何度も目を通して、暗記してしまうほど見ても、また見たくなってしまう。


楽しみでしかたなかった。




「あゆ〜、旅行当日は駅で待ち合わせしようね!」



バイトを終えて、リカの部屋でガイドブックを見ている俺に、リカはそう言った。




最近はずっと、一緒にいて、別々の家に帰るなんて事はなかった。



仕事の上がる時間が違っても、帰る部屋はリカが待ってくれている部屋。



リカが後半上がりの時は、必ず迎えに行く。



だから、旅行当日も、一緒に部屋を出るもんだと思っていた。




「何で?」



明らかにテンションが下がっていく俺に、リカは嬉しそうに答えた。



「だって、せっかくの旅行だから、最初から楽しみたいの!ドキドキしながら用意をして、歩太に会えるっ!!って思って待ち合わせ場所に向かうの!そして二人で電車に乗って旅行に行くの〜!」



俺にはあんまり分からないけど・・・



リカは“いい提案でしょ?”とでもいう様に目をキラキラ輝かせている。



そんなリカを見ていると、それも悪くないかな?なんて思ってしまう。



リカも、俺と同じように、この旅行を楽しみにしてくれている。



それが嬉しかった。



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