君が教えてくれた事



旅館に着いた頃には、すっかりチェックインの時間も過ぎていた。



感じのいい仲居さんが、俺達を部屋に案内してくれた。



部屋に続く廊下を、少しばかり緊張しながら歩く。



木の香りと、大きな窓から見える中庭。

予約する時に雑誌で見た写真なんかより、ずっと雰囲気のあるいい旅館だった。




部屋に入ると、俺達はまた子供みたいにはしゃいだ。



「すご〜い!超ーいい眺め〜!!」



全室から海が見えると宣伝しているだけあって、窓から見える景色は感動的だった。



さっきまで遊んでいた海が、壁一面に切り取られた写真の様に窓の向こうに広がっていた。




「お食事は7時にお持ちします。」



窓にかじりつく俺とリカに、案内してくれた仲居さんは、そう告げると、部屋を出て行った。



畳のいい匂いのする部屋は、おばあちゃんの家の匂いと、どこか似ていて、懐かしい感じがした。



テーブルの上には、さっきの仲居さんがいれてくれた、温かい日本茶。



きっと普通のお茶なんだろうけど、遊んで疲れた体に、ゆっくりと染み込む様ですごくおいしかった。





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