君が教えてくれた事



テーブルに置かれた旅館案内のファイルを何気なく手に取った。



俺の興味をひく1ページ。



「ごはん7時だって。それまでどうする?」




荷物の整理をしながらリカが聞く。



俺は手に取ったファイルをリカに見せた。




〈貸し切り風呂ご予約〉




俺の言いたい事を察したリカは、慌てる様に首を横に振る。


「ムリだよ・・・恥ずかしい・・・。」



顔を赤らめて、下を向く。



「今更、何が恥ずかしいわけ?」




リカの裸なんて、もう何度も見たぞ?



もっと恥ずかしい様な事、俺達いっぱいやってんじゃん?



女の子って分かんねー。



俺がいくら言ってもリカは“ムリムリっ!!”と絶対に首を縦には振らなかった。




リカに拒否られて、若干凹みながらも、俺達は食事の前に温泉に入る為、大浴場に向かった。




桧のいい香りがするでっかい風呂に、ゴツゴツした岩の露天風呂まである。




「すっげぇーっっ!」





9月に入って、夏休みも終わったこの時期。時間もまだ早い為、広い風呂に、客は俺以外に3人しかいなかった。



貸し切り状態の風呂にゆっくりと体を沈めると、溶けてなくなってしまうんじゃないかと思うくらいに気持ちがいい。



なんとも贅沢。まさに極楽。



リカに拒否られて凹んでいた事も、もうすっかり忘れていた。




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