君が教えてくれた事



夕食の時間を迎え、仲居さんが部屋に料理を運んで来た。



見た目もキレイで、すごくいい匂いがするのに、何の感動もない。



「歩太!おいしそうだねっ!」



「・・・。」



「ね〜歩太、ご飯食べ終わったら散歩しない?」



「・・・。」



一生懸命、明るく話しかけてくるリカ・・・


俺は味も分からないまま、ただ目の前の料理を口に運ぶ。




「ねー歩太、さっきの事、怒ってるの?」




「・・・。」



怒ってんのかな?分かんないよ・・・。



何て表現したらいい?



リカは悪くないって、分かってんのに。


さっきみたいに笑えない。



胸ん中が真っ黒で、頭の中には、知らないヤツと楽しそうに笑うリカの姿が何度も浮かんで・・・



イライラして、腹が立って、どうしようもなく苦しい。





結局俺達は、一言も言葉を交わさないまま、食事を終えた。



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