君が教えてくれた事
休憩が終わると、また同じ仕事を繰り返す。
「初めまして。バイトの野上圭太(ノガミケイタ)です。」
愛想の良さそうな男が、俺に声をかけてきた。
俺はそいつを見る事なく、ひたすら皿を洗い続けた。
「チッ・・・何だよコイツ。」
当たり前の反応で、いつもの事。
店が閉店した後も、ずっと皿を洗う。
全ての洗い物を済ませて、言われた通りに流しを洗う。
そしてやっと、俺はこの仕事から解放される。
ホールでの短い終礼が終わると、
「お疲れ様!」
リカが声をかけてくる。
俺はその言葉を無視して、店長の所に向かった。
「もう、帰っていいですか?」
「あっあぁ。ご苦労様。」
その場の空気で、みんなが俺の事を、どういう風に思っているのかが感じ取れる。
でも、俺はあえてそうした。
その方が、楽でいい。
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