君が教えてくれた事



その日から俺は繰り返し同じ夢を見るようになった。




リカと出会う前によく見ていた夢。




いつの間にか見なくなっていたその夢を、毎晩見ては、目が覚める。






幼い俺の腕を掴んだ義理の母親が、振り上げた腕を容赦なく俺に振り下ろす。



般若のような顔をした母親に、許しを請う様に哀れに泣き続ける自分の姿が・・・




いつしか、今の自分に変わっていく。



そして、無表情の俺は泣き叫ぶ幼い子供の腕を掴んで、躊躇う事なく、腕を振り上げた。





「やめろーっっ!!」





荒く乱れた息と、額に滲んだ汗。


真っ暗な部屋を見渡して、夢であった事に、心底ホッとする。





そして俺は思うんだ。




俺は父親にはなれないと・・・




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