君が教えてくれた事
俺はリカに返事をしないまま、更衣室で着替えを済ませると、みんながいるホールには行かず、バックルームのイスに座った。
すぐにリカが入って来て、
「宝来くん、着替えたなら、向こうでみんなと話したら?」
そう声をかけてくる。
もういい加減、放っておいて欲しかった。
何も答えないでいると、リカは無言で更衣室に入って行った。
やっと分かったんだと思った。
でも、更衣室から出てきたリカは、
「宝来くん、あっち行かない?」
心配そうに俺に話しかけてくる。
何でこの子は、こんなにも俺に気を使ってくれるのか?
今までの経験から、俺には全く分からない。
リカはそのまま俺の前のイスに座った。
何も話す事なく、ただじっと俺の事を見ていた。
しばらくして、リカと仲がいい沢村美月(サワムラミツキ)が、リカを呼びに来た。
その子は、俺の事を見ようともしない。
やっぱり、これが普通なんだ。
でも、
「宝来くん、もう開店作業、始まるから一緒に行こう?」
リカは、俺を無視しなかった。
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